やさしい日本人

外国人に道を聞かれた。

持っている地図がハングルだったから、韓国人と判断。
心の中で「オレンジダウン(OD)」と命名。

 

OD:『スマセン』

俺:『はい?』

OD:『ナンバ、ナンバ』

千日前線が近くにあったから、ここを降りて、ピンクの線に乗れとジェスチャー。

OD:『アリトザイマス』

 

でも俺の目的地もなんばだったから少しして追いかけたら、案の定構内MAP前で立ち尽くすオレンジ。ジェスチャー交じりで声をかけた。ちなみに俺は英語もできない。

俺:『俺、なんば。だから、トゥギャザー。』

【オレンジはヘラヘラしている!】

なんとなく伝わったのか、後ろを着いてくるオレンジ。まるでドラゴンクエストのようにぴったり後をついてくる。

 

【オレンジが仲間に加わった!】

指示通りに230ゴールドの切符を買って、一路なんばへ。

車内では隣に座りはしたものの、お互いに気を使う日本人と韓国人。しかし俺は「ここは日本だ。俺がリードしなければ」と妙な責任を感じる。

俺:『トラベル?』

OD:『ウフっ』

俺:『あ~、仕事?ワーキング?』

OD:『ウフっ』

俺:『えー、リョコウで来たですか?』

OD:『カンコク!』

ダメだ!俺はもうダメだ!うるせぇぞオレンジ!

 

【オレンジはこっちを見ている】

俺:『ウフっ』

OD:『ウフっ』

かなりヘコんだ。

 

するとODが何かノートを見ているではないか。そうか、もちろんなんばに着いてからも、ODは更にそこから歩いてどこかに行かなきゃいけないはずだ。過酷な試練だ。ノートをチラ見すると、何か手書きの地図みたいなものが描かれているではないか!

俺はもっとODの役に立たなければと思い、ノートに描かれた地図を見せてくれと要求。
するとODも快くノートを入れに手渡してくれた。

ただ、ODはワザワザノートを閉じた。

俺:『いや・・・その・・・』

疑問が残る。
なぜワザワザ閉じたのか?
ノートが珍しいと思うような人間に見られたのか?
これは韓国でバカウケのネタなのか?
閉じた状態で知らない人に個人的なノートを渡してODに何のメリットがあるのか?

俺は閉じられたノートを開くわけにもいかず、ノートの外観と手触りのみ入念に確認してODにリターン。

【ODはこっちを見ている】

十分にムカつく材料は揃った。

 

そうこうしているうちになんばに到着。
そこでまたびっくり。

OD:『シンサイバシ!』

俺:『ワッツ!』

OD:『シンサイバシ!』

ODはスゲー嬉しそうにしている。どうしたOD!君はまだ目的地には着いていない!
俺か?俺が間違えたのか?とあせる俺!

何とか身振りで問い合わせると、どうやら歩いていくつもりのようだ。確かにハングルMAPで見ると距離がスゲー近い。でも、何とか駅もあることを伝えたくて。

俺:『心斎橋、ステーション、アルヨ?』
俺:『ドントステーション?ノットシンサイバシステーション?』

そういえば、俺は英語もできない。
御堂筋線の路線図で心斎橋を指差すと、

OD:『ウフっ』

それはもういい。

 

とにかく駅でもよさそうなので御堂筋線へ。ホームまで送って『ネクスト、ネクスト』と伝えると『分かってるって』みたいなちょっと上からのOD。

 

どうやらお別れは近いようだ。そして俺は確実に遅刻だ。
なんだか寂しい気持ちになったけど、突然の一期一会のイベントに俺は満足だ。

バイバイと告げると、俺を引き止めなにやらカバンをゴソゴソするOD。
失礼かもしれないけれど、正直「韓国海苔」が出てくるもんだと思っていたし、『そんなん今貰っても本気困るし』レベルまで考えていた。

カバンから出てきたのはデジカメだった。ODは巧みなジェスチャーで写真を撮ろうと誘ってきた。
もちろんOKだ。満面の笑みとベタなピースでカップル撮り。

しかしODはどう見ても日本人にしか見えない。御堂筋線のホームで男二人がまるで彼氏と彼女のように写真を撮っているわけだ。しかしそんなことは気にしない。

 

俺は、やさしい日本人だ。


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  1. pluglow より:

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